【肩こり対策】肩関節を解剖学的に理解する
みなさん。
肩こり対策していますか?
肩こり対策をする上で、肩関節周囲の解剖学を理解しておくことは非常に大切と考えます。
そこで肩関節の解剖学をざっくりと学んでいこうと思います。
肩関節の構造
肩関節は、鎖骨・肩甲骨・上腕骨の3つの骨で構成されてます。一般的には肩甲骨と上腕骨との関節と理解されますが、腕を挙げる際に動く部位を細かく分けると、
①鎖骨と肩甲骨の関節
②上腕骨と肩甲骨の関節
③肩甲骨と胸郭の関節
の3カ所が、それぞれバランスをとりながら動いています。
肩関節一つと言えど、少し複雑に関節が絡み合っているわけです。
関節面は垂直方向を向いており、軸方向では関節面が軽度前方を向いていることがわかります。
写真で見るとこんな感じですね。
大きな直径をもつ球状の上腕骨頭と、比較すると小さくて中央がややくぼんだような楕円の形状をもつ肩甲骨関節窩で構成されています。
野球のグローブにポケットが収まるようなイメージでしょうか。
思わず野球で例えてしまいました・・・
このように、骨構造であまり拘束されない肩関節は、関節を包む関節包・靭帯・腱によって安定性を保ちながら、自由に大きく動くという特徴があります。
そのため、複雑な動作が可能になっている反面、怪我もしやすくなっていると言うわけです。
腕を挙げたとき、可動域は2つの関節で分担しており、
②上腕骨と肩甲骨の関節と③肩甲骨と胸郭の関節がおよそ2:1の割合で動きます。
「肩甲上腕リズム」とも言います。
もう少し具体的に言えば、真横に手を上げたときは肩関節外転90°といい、90°の中で②上腕骨と肩甲骨の関節が作る角度が60°、③肩甲骨と胸郭の関節が作る角度が30°ということになります。
分かりにくくてすみません
写真で言えばこのような感じです。
ちなみに写真にもあるとおりで、肩を横に30°挙げたとき、つまり肩関節外転30°だと②上腕骨と肩甲骨の関節が作る角度のみが影響します。
そして、挙上角度が60°よりも上がると、肩甲骨の運動、つまり③肩甲骨と胸郭の関節が作る角度が大切になります。
骨粗しょう症による高齢者の脊椎の後方への弯曲(亀背とか円背とも言います)は、肩甲骨及び胸椎の動きが制限されて、腕が高く挙げられない原因になります。
筋肉・腱構造
肩周りの筋肉ってちょっと苦手…
まずは大まかに整理することが大事です。
一緒に見ていきましょう!
肩関節をもっとも外側から大きく包み、腕を動かす際の主導的な役割を担う筋肉として、大胸筋・三角筋・広背筋が挙げられます。いわゆる「アウターマッスル」ですね。
体の外側にあるから「アウターマッスル」と名付けられています。
一度は耳にしたことがあると思います。
大胸筋=胸の前
三角筋=肩全体
広背筋=肩甲骨の下
こんな感じでざっくりと覚えておけばいいと思います
写真で見るとこんな感じになります。
また、肩関節を内側から包み、腕を動かす際の細かな修正的な役割を担う筋肉として、棘下筋・棘上筋・肩甲下筋・小円筋が挙げられます。いわゆる「インナーマッスル」とか「ローテーターカフ」とよばれることもあります。
体の内側にあるので「インナーマッスル」と言います。
「ローテーターカフ」は日本語にすると「回旋筋腱板」となります。
腕を回したり複雑な動きができるから「ローテーターカフ」なんだなあという認識でいいと思います。
ローテーターカフを体の前から見るとこんな感じ
背中側から見るとこんな感じ
「インナーマッスル」に関してはまた後程少し触れようと思います。
肩関節を安定化させる機能
肩関節が安定することによって、腕はしなやかに強く動きます。
その役割として大事なものが2つ。
・関節包
・腱板
この2つになります。
関節包
肩関節を取り囲む組織として最も深層に位置する軟部組織が関節包です。
先程お話しした「インナーマッスル」よりも深いところにあります。
この関節包のなかに、靭帯といわれる肥厚して強い部位(関節包靭帯)や、薄くなり伸張性に富む部位(腱板疎部)などが存在して、それぞれが機能をもちます。
関節包に関しては「静的な安定構造」と理解しましょう。
肩関節が脱臼すると、この靭帯などの組織が肩甲骨関節窩縁に付着する近傍で断裂することが多く、バンカートBankart 病変(関節包関節唇複合体部損傷)とよばれます。
また、関節包に炎症が生じて線維化することで関節の可動域が失われると、凍結肩 (いわゆる五十肩)とよばれます。
ここら辺に関しては
関節包が傷つく
↓
炎症
↓
繊維化(固くなる)
↓
五十肩
この流れを知っていればバッチリです。
腱板
腱板は、先程の話の通り肩甲骨から起始する4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)が関節を包み込むように走行して、上腕骨の関節近傍に停止して関節を安定化させる作用をもちます。
役割としては、上腕骨を動かす機能もありますが、さらに大切な役割として、上腕骨頭を肩甲骨関節面に引き付けるように安定化させる機能があります。
腱板が上腕骨頭を取り囲み収縮することで、 肩関節の可動の中心が安定し、三角筋のような外側の大きな筋肉が力を発揮でき、その結果として腕が力強く動く、という流れになります。
腱板に関しては「動的な安定構造」と理解しましょう。
写真で言えばこんな感じになります。
a:三角筋の強い力(→)に対して棘上筋・肩甲下筋が上腕骨頭中心(●)を関節面上に保つように収縮しています。
b:前方の肩甲下筋と後方の棘下筋・小円筋がバランスよく収縮して、上腕骨頭を関節面上に保っています。
少し難しくなってしまいましたが、静的な安定構造(関節包)と動的な安定構造(腱板)で、肩を固定しつつ、しっかり動くことができるようにしていると捉えておけば良いと思います。
肩関節の神経
神経ってかなり難しそう…
そうですね。
確かに理解しにくい部分はあると思います。
難しい原因は漢字の多さにあると思われます。
大切なのは文字を覚えることではなく、
大まかなイメージを掴みつつ、神経障害(痺れなど)の評価
につなげることにあります。
全部は理解できなくても、イメージさえ分かればOKです!
それでは早速本題に入ります。
腕神経叢(腕の神経全体)は、首の部分の脊髄から出る第5頚神経〜第8頚神経と第1胸神経から形成されます。
これらの神経根が脊柱管を出て、鎖骨と第1肋骨の間を通り、腋窩(脇)の下に到達するまでの間に神経線維を複雑に入れ替えて、最終的に腕の外側に分布する腋窩神経と、肘より先の方へ行く正中・尺骨・橈骨・筋皮神経になります。
怪我をした時や手術した後に、これらの神経に障害が生じることがあります。その際に、皮膚感覚の低下やしびれ感を調べることで、神経障害の有無を確認します。
挫折しそう・・・
ここはまだ大丈夫!
調べる場所(固有知覚領域)は決まっていて、以下の通りになります。
a:正中神経=人差し指か中指
b:橈骨神経= 親指と人差し指の背側(手の甲側)
c:尺骨神経=小指の掌側
d:腋窩神経=腕の少し外側
e:筋皮神経=肘より少し先の膨らみ
これをしっかり覚えましょう
この位置を触って、しびれや違和感がなければ神経障害の可能性は低いといえるわけです。
まとめ
・腕を動かす際には、肩甲骨、鎖骨、胸椎がバランスよく連動している。
・ 肩関節の周囲は、運動の主導権を握る大胸筋、三角筋、広背筋に囲まれている。
・関節包と腱板は、関節を安定させる重要 な役割がある。
・神経障害の有無を観察するには、正中神 経、橈骨神経、尺骨神経、腋窩神経、筋皮神経の固有知覚領域を調べる。
少しわかりにくい部分があったかもしれませんが、わからないときは何回か見直しつつ教科書を見たり、写真を見たりして大まかなイメージを作るように心がけましょう。
もしよかったらフォローやイイネをいただけると、モチベーションになるのでうれしいです。
参考文献
田崎篤(2020): ポイントだけを総ざらい! 肩関節疾患とケアのまとめ 肩関節の解剖,整形外科看護,vol.25 no.6
竹井仁(2015):正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書, ナツメ社