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テニス肘って治るの?治療や診断のまとめ

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みなさん。
テニス肘って聞いたことありますか?

 

テニスをやってる人の病気でしょ?

 

ってお思いの方。
少し違うんです。

 

テニスをやってる方が多いのは間違い無いんですが、テニス経験がなくても、テニス肘にはなるんです。

 

簡単に説明していきますね。

今回はテニス肘の病態から治療法まで説明してますのでよかったらご覧ください。

 

 

病態

 

前腕の伸筋群、つまり手首を手の甲側に動かす筋肉の多くはenthesisとよばれる付着部を形成して上腕骨外側上顆から起始しています。

 

写真で見るとこんな感じです。

 

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慣れない漢字がたくさん出てきてしまい申し訳ありません…

 

肘の外側に筋肉が集まってると考えていただければ大丈夫です。

 

テニスをする時にバックハンドをしますよね?

 

その時って手の甲を返すような動きになると思います。

この時に肘の外側に負担がかかってしまっているんです。

 

でもこれって、荷物を持つ時やパソコンを打つときも同じように、手の甲を返す動きを行いますよね?

 

そうなんです。


テニスでは手の甲を返す動きが多いから、このenthesisとよばれる付着部を痛めやすいだけであって、誰しもがテニス肘になる可能性があります。

 

そして、厄介なことにこの筋肉の集まっているポイントは肘関節外側側副靱帯や輪状靱帯 、さらには関節包や滑膜ヒダとも一塊、もしくは連続性を有しているため、筋肉以外の要因でもテニス肘と同様な症状を呈します。

 

ガッと一つのところに集まっちゃってるんでいろんな原因で痛みが生じてしまうということです。

 

症状

 


テニス肘の有病率は全人口の1.3~2.8%と報告され、テニス選手に限ると罹患率は40代 で69%、それ以上の年齢層では70%を越えています。

 

そりゃテニス肘って名前がつきますわな。

 

発症は45~54歳の利き手側が典型的であり、性別による差違はありません。

テニス選手では過労、無理な打ち方、ラケット(種類・グリップの太さ・ガットの強さ)が誘因となり、一般的には重量物を持った後に肘関節外側から前腕の伸筋群の筋腹にかけての疼痛が生じます。

 

とくにテニス選手ではバックハンドストロークの際の疼痛が強く、それ以外の症例では重い物が持てない、タオルや雑巾が絞れない、力が入らないなどの症状を訴えます。

 

テニスに限らずバックハンド動作を行うようなスポーツ(卓球、バドミントンなど)でも同様の痛みを訴える方がいらっしゃいます。

 

ラケットスポーツで「バックハンド」を行うようなスポーツであれば当然かもしれません。

 

診断

 

診断に関しては目で見てすぐにわかる理学所見と画像所見に分かれます。

それぞれを解説してまいります。


理学所見


上腕骨外側上顆の圧痛は定型的でほとんどすべての症例に必発になります。

Thomsenテストとmiddle finger extension テスト、chairテストなどの徒手検査もほぼ全例で陽性になります。

 

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Thomsenテスト

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Middle Finger Extensionテスト

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Chairテスト

 

 

 

画像所見


通常、X線写真で異常所見はありません

 

これが厄介なところなんです。

 

磁気共鳴撮像法や超音波検査は補助診断としての役割が大きく、本疾患では上腕骨外側上顆の輝度変化や腕橈関節内に滑膜ヒダを認めることがあります。

 

簡単なのは超音波なので、超音波のある整形外科やクリニックで診察を依頼すると良いかと思います。

 

整形外科やクリニックであれば徒手検査も行ってもらえると思います。

 

治療法

 

治療法としては大きく分けて
①保存治療
②手術治療

の2つとなります

 

2カ月間の保存治療で効果がない場合は手術治療に至るケースが多いです。

まず①保存治療を説明します。

 

保存治療

 

急性期つまり、発症してすぐの場合は
①安静
②手関節背屈位での固定(手の甲側に手首を固定)
③冷却

この3つを行います。

 

どうしても安静にできないような人は、上腕骨外側上顆にかかるストレスを軽減する目的でテニス肘バンドの使用も有効です。

 

テニス肘バンドはこんな感じですね。

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薬物療法としては
まず、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の内服や軟膏や湿布などの経皮用剤を使用します。

 

疼痛が強い場合は除痛効果を期待して副腎皮質ステロイドと局所麻酔薬を上腕骨外側上顆に局所注入します。

 

つまり軽めの痛み止めやぬり薬から初めて、痛みが治まらないときは直接注射するという感じです。

 

炎症が鎮静化すれば、温熱療法や前腕伸筋群のストレッチを行います。

 

順調に経過すれば肘を伸ばした状態で手関節を最大背屈した状態(手首を手の甲側に曲げる)を保持する筋力強化訓練を行います。

 

急性期が終わったら

①痛み止めの薬

②ストレッチ

③筋トレ

この順番で治療を行うと覚えてください。


続きまして、②手術治療を説明致します。

 

手術治療

 

手術は
①上腕骨外側上顆周辺の病巣へ直接処置を行う術式
②遠隔部の操作で間接的に治癒を期待する術式

の2つに大別されます。

 

前者には短橈側手根伸筋起始部の切離、短橈側手根伸筋起始変性部分の切除と健常部同士の縫合(Nirschl法)または、短橈側手根伸筋起始部の切離または切除と滑膜ヒダや輪状靱帯切除といった関節内操作の併施(Boyd法Bosworth変法)などが含まれます。

 

後者には前腕部での短橈側手根伸筋腱の延長術(Garden法)があります。

 

完全に呪文ですね。

筋肉を切ったり伸ばしたりするんだなぁという認識で良いと思います。

 

まとめ

 

テニス肘は上腕骨外側上顆に負担がかかる病態である
重い物を持ったり、タオルを絞る時に痛みを生じる
検査は超音波と徒手検査が有効
2カ月間の保存治療で改善なければ手術を行うことが多い


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参考文献


森谷浩治(2014):基本のきから学ぼう 患者さんに話せるスポーツ障害 第6回テニス肘(上腕骨外側上顆炎),整形外科看護,vol.19,no.2


日本整形外科学会HP