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【肩こりの病態】自律神経から考える

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肩こりってなんなんでしょうね


病院に勤務していると肩こりで通院される方は非常に多いように思います。

 

実際に平成28年度厚生労働省国民生活基礎調査では病気や怪我の自覚症状の調査において、女性では第1位、男性では第2位となっています。

 

つまり、日本人の多くの方が肩こりに悩んでいるということになります。

ちなみに、男性の第1位は腰痛です。

 

器質的要因が明らかでない肩こり、つまり原因のわからない肩こりの誘発因子としては、長時間の持続的筋収縮(過緊張状態)が挙げられています。

 

パソコンで長時間作業をしたり、同じ作業を繰り返し行う事務作業などで肩こりが生じやすいということになります。

 

また、肩こりを訴える人は僧帽筋の筋硬度が充進することも知られています。
つまり、肩甲骨の上あたりがガチガチに固まってしまうということです。

 

そして、最近ではストレスとの関連も明らかになってきています。

 

たくさんありすぎて挙げればキリがありません

 

私は理学療法士ですので、筋肉のコリに関しては精通しているのですが、ストレスとなるとあまり知識がありませんでした。

 

しかし現代社会において、ストレスなしで肩こりを語る事は難しいと思い、色々な論文を読み漁りました。

 

ここで知識を共有するとともに、お困りの方が少しでも解決の糸口を見つけられれば、嬉しい限りです。

 

また、今回は自律神経にポイントを絞って考えていきたいと思います。

 

 

自律神経とは

 

では、自律神経ってなに?


と思われるかもしれませんね。

 

自律神経とは簡単に言えば
生命を維持する機能
と言えます。

 

具体的にあげるとすれば、心拍数や血圧、発汗、体温とかですかね。

 

自律神経に異常が生じると急に血圧が上がったり、異常に汗が出続けたりします。

もちろん逆に、血圧が下がったり、汗が出ないこともあります。

 

肩こりに長年悩んでいる方は、この自律神経に異常が生じている可能性が高いと言われています。

ずーっと肩に力が入ってしまっていて、体の調節が効かなくなってしまうような感じでしょうか。

 

さらに、筋肉の緊張が続くと、交感神経の興奮によって血管がきゅっと締まります。これにより肩周辺の血流量が減少し,虚血(血液不足)を生じ,低酸素状態に陥った筋からは,さらに様々な代謝産物が生成され,それらがまた知覚神経を刺激し脊髄の刺激となり、筋肉の緊張へと繋がります。

 

分かりにくくてすみません…

 

完全に悪循環が生じるということですね。

 

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パソコン作業時の自律神経

 

パソコン作業をしている人は肩こりが生じやすいと言われています。

 

パソコン作業中は頭が少し前に出て僧帽筋がぐっと力が入った姿勢となってしまい、不良姿勢を呈しやすいということです。

 

このような不良姿勢か続くことで、肩こりになりやすいとも言えます。

 

また、パソコン作業時はずーっと同じ姿勢になってしまい、自律神経の反応が減弱してしまうようです。

 

運動時の自律神経応答


肩こりのある方はパソコン作業などでずーっと同じ姿勢になってしまうことがよくないとお話ししました。

それでは、体を動かした時はどうなんでしょうか?

 

肩こりのある方は、運動時の自律神経応答の減弱も示唆されています。

 

運動したときに筋への適切な量の血液が供給されないことで、筋の酸素消費量に見合った酸素が供給されない状況になります。それによって痛みを感じてしまう悪循環が生じてしまうそうです。

 

睡眠時の自律神経応答

 

どんどんいきます(笑)

 

肩こり有訴者では安静時かつ運動時に対する自律神経応答が減弱しているというのは分かりましたね。

では睡眠時はどうなんでしょうか?

 

自律神経はサーカディアンリズムとして日内変動しており、特に日中活動時と睡眠時ではその活動は大きく異なります。

 

サーカディアンリズムは簡単に言えば、朝起きて、夜眠るという自然なリズムのことですね。

 

日中活動時と安静時(睡眠時)の自律神経活動の変化を調べると、夜間睡眠中は肩こりの有無にかかわらず副交感神経活動優位の変化を示すものの、健常者との比較において肩こり有訴者では副交感神経活動の減弱と交感神経活動の充進を示すようです。

 

図がこちらですね。

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城由起(2016):自律神経応答からみた肩こりの病態

 

肩こりのある方は、夜に眠りにくいということがわかります。

 

このような夜間の自律神経活動の変調が日中活動時の肩こり症状に影響しているかもしれませんね。

 

私の印象としても、肩こりのある方は
睡眠障害と眼精疲労
を併発する方が非常に多い印象です。

 

その辺もまた、調べて記事に出来れば嬉しいです。

 

肩こりとストレス

 

心理社会的ストレスは肩こりに影響しやすく、仕事のストレスを抱えている人ほど肩こりのある方が多い印象です。

 

心理的・身体的ストレスには、

視床下部ー交感神経一副腎髄質系(SAM system)
視床下部一下垂体一副腎皮質系(HPA axis)


の2つの応答系があります。

 

SAM system はCannonの「闘争か逃走」の緊急反応として知られています。

 

後ろから手を掴まれたときにすぐ払ってしまうような感じでしょうか。

 

その時は交感神経が優位で、SAM systemが働いてるんだと思います。

 

手を掴んだ相手が友達だと分かると、そのSAM systemも効かなくなるんでしょうかね。(笑)

 

少し細かく言えばSAM systemは,運動や痛みなどの身体的ストレスが加わることにより、交感神経が賦活し副腎髄質からカテコラミンが分泌されて、急性のストレス反応となるわけです。

 


HPA axisはSelyeの「外界からのあらゆる要求に対する非特異的なストレス反応」として定義されています。

 

みなさんはお化け屋敷好きですか?

僕は嫌いなんですけれども…

 

お化け屋敷に行った時ってすごく不安になるし、怖いですよね?
そのとき、めっちゃストレス感じてます。

 

また同じように少し細かく言えば、

HPA axisとは、恐怖・不安・痛みなどの心理的ストレスが加わることにより、視床下部からの副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンを介して下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモンが放出され、副腎皮質から糖質コルチコイドが分泌され、急性ストレス下でも慢性ストレス下でも誘導されます。

 

先生、頭がパンクしそうです。

緊急時のストレスとじわじわくるストレスの2種類があるという程度の認識でいいと思います。

 

肩こりのリハビリテーション

 

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肩こりのリハビリテーションとしては、ストレッチや肩こり体操などの運動療法の他、物理療法や徒手療法が一般的に行われています。

 

しかし、

本当に運動って効果あるの?


って思ってしまうのも無理はありません。

 

肩こりは筋骨格系の問題のみでなく自律神経系やストレス応答の変調も関与している可能性があるので、運動とは関係ないのではないかと思ってしまいますよね。

 

しかし前述のとおり、運動による交感神経の刺激や肩甲骨周囲の血流量増加は少なからず肩こり解消のきっかけになりうると言えます。

 

肩こりに限らず、疾痛マネジメントに関するガイドラインにおいて、慢性痛モデル動物を用いた実験においても5日間の定期的な運動により痛覚過敏と自律神経機能異常の発生を予防しうる可能性が示されています。

そのことから、運動習慣の獲得は運動時の自律神経応答を改善し、肩こりのマネジメントとして有効であると結論付けられています。

 

そのため、肩こり対策としては、
まず運動やストレッチをしてみるということをオススメ致します。

 

いや運動なんてそんな簡単にできないよ。

 

とお思いの方はぜひこちらの記事をご覧ください。

 

 

www.rehatree.net

 

僕も理学療法士としてではなく、生徒として(笑)参加しているオンラインヨガが気軽にできていいなと思います。


また医療従事者が肩こりの方を担当するときは、社会的なストレスやそれに対する適切なストレスコーピングが行えていない可能性もありますので、患者教育や姿勢制御など作業関連性疾痛の予防対処、ライフスタイルの管理など,認知行動療法を含めた心理社会的アプローチも必要になると思われます。

 

かなり包括的に考えていかないといけないということです。

 

ご自宅でできることとしては、枕の検討なんかが比較的しやすいかなと思います。

 

こちらの記事で肩こりに対する枕について、述べておりますのでぜひ参考にしてみてください。

 

 

www.rehatree.net

 

まとめ

 

・肩こりに対する運動は効果的である。
・肩こりの治療においては筋骨格系のみを対象 とするのではなく、自律神経応答を含めた包括的なアプローチが必要である。

 

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引用文献
1)伊藤達雄:肩こりの診断のポイント.クリニシァン.44:495-498,1997.
2)国民生活基礎調査(平成25年)の結果から一グラフで見る世帯の状況一.

3)Sabharwal R:Exercise prevents development of autonomic dysregulation and hyperalgesia in a mouse model of chronic muscle pain. Pain.157(2);387-398,2016.
4) 城由起(2016):自律神経応答からみた肩こりの病態,MB Orthop,VoL29,No. 9