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【あなたの仕事は腰痛リスク高い?低い?】腰痛の疫学を整理

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 腰痛って困りますよね。


腰痛は最も一般的な愁訴であり、厚生労働省が公表する業務上疾病発生状況等調査(仕事でどんな病気になるか)では腰痛の件数が最も高い。

 

当たり前ですよね!
あなたの周りにも腰痛持ちはめちゃくちゃいますもんね。

 

特に女性は肩こり男性は腰痛といったイメージがあります。

 

今回は仕事による腰痛をメインに、いろんな切り口から腰痛を見ていくことにします。

 

 

腰痛の生涯有病率

 

みなさん、腰痛の生涯有病率はどれくらいだと思いますか?
生涯有病率は文字通り、一生のうちに腰痛になる確率のことを言います。


なんと
男性82.4%女性84.5%
8割を超えちゃってます。

 

あり得ますか??

 

野球で言えば、スタメンの9人のうち7-8人は腰痛があるってことになります。

ピッチャーとキャッチャー以外全員腰痛持ちとかがあり得ちゃうわけです。

 

笑うしかないですね笑

 

同じ研究チームの報告では、重症化した腰痛(ここでは仕事などの社会生活を連続4日以上休んだまたは3カ月以上続いた腰痛経験者を指します)は、3.9%であったというデータも出ています。

 

40人のクラスでは2人くらい腰痛でしばらく休んじゃうって感じですね。

 

そんなクラス嫌です。

 

また、腰痛治療に対し医療補償(労働災害あるいは自動車事故)を受けた経験者は、100 人に 1 人(1.1%)となっています。

 

もう怖いとしか言えないです。

 

別の研究で、直近1ヶ月に腰痛があるかという質問で腰痛があると答えた割合は25.2%でした。

 

本当に恐ろしいです。

 

職業別の腰痛率

 

職業別に腰痛を見てみましょう

 

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職業別腰痛率と休業率

 

みなさんのお仕事はいかがでしょうか?

 

ポイントとしては2つで
①看護師と運送業で腰痛率が30%以上
②デスクワーカーで欠勤率が11%

この2点でしょうか。

 

看護師などの医療職や介護職は高齢者の介護の時に、腰痛を発症しやすくなります。

 

リハビリの観点から言えば、移乗動作でうまく身体を使えばもう少し割合を減らせると思ってしまいます…

もっと理学療法士が社会に出ていかないといけないですね…

 

運送業の方も同様に、無理な姿勢で重いものを持っているような方が多い気がします。

 

生活動作に関して、今後何か発信していきたいと思います。

 

デスクワーカーの欠勤率はストレスですかね?

 

デスクワークだとリモートワークもできるので、欠勤という概念自体が少し他の職種と違っている可能性はあります。

 

それにしても11%は多い気がします。

 

別の視点ですが、デスクワーカーに関しては肩こりや首こりがかなり多いです。

肩こりに伴って頭痛や睡眠障害も多くなります、そういった部分から欠勤率が上がっている可能性はありますね。

 

腰痛の危険因子

 

過去1年間「全く腰痛がない」を2年間の追跡調査ができた836人に対する研究では
仕事に支障をきたすほどの新たな非特異的腰痛が発症したのは3.9%でした。

 

また、重要な危険因子を調べると、腰痛既往、持ち上げ動作が頻繁(1日の作業時間の半分以上)なことに加え、職場での対人関係のストレスが強いことが挙げられた。

 

何となく持ち上げ動作がまずいのはわかるけど、職場のストレスも影響するのは少し意外でした。

 

心理的ストレスも踏まえてリハビリアプローチしないといけませんね。

 

この研究では人間工学的要因心理社会的要因に分けて、危険因子をリストアップしておりました。


以下に載せておきます。

 

人間工学的=身体の構造的や機能的
と捉えていただいて良いと思います。

 

人間工学的要因
  • 持ち上げ
  • 前屈み動作が頻繁
  • 20kg 以上の重量物取扱い and/or 介護作業に従事
  • 25kg 以上の持ち上げ動作(持ち上げ・前屈み・捻り動作が頻繁)

 

心理社会的要因
  • 職場の人間関係のストレスが強い
  • 週労働時間が 60 時間以上
  • 仕事の低満足度
  • 働きがいが低い
  • 上司のサポート不足
  • 人間関係のストレスが強い
  • 家族が腰痛で支障をきたした既往
  • 不安
  • 抑うつ
  • 身体化

 

ざっくり言えば
重いものを前傾姿勢で持つべからず
ってことですな。

 

心理面に関してはなかなか難しいところがありますが、
仕事にやりがいを見出しつつ
あまり抱え込まずに仕事をする

っといった感じですかね。

 

心理面に関してはまた以下の項目で少しお話ししていきますね。

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危険因子をどう捉えるべきか

 

ではどのように危険因子が実際に、腰痛につながっていくのか紐解いていきましょう。


ポイントは人間工学的要因と心理社会的要因の2つに分けると分かりやすくなります。

 

①人間工学的要因に伴う身体的負荷
→椎間板内での髄核や椎間関節のズレ・炎症といった脊椎組織の微小な変化を生む。本来とは異なる位置での身体の動きとなり、疼痛が生じる

②心理社会的ストレス
中脳辺縁系dopamine systemの機能低下といった脳機能の不具合、それに伴う自律神経系のアンバランスや下行性疼痛調整系の痛覚過敏を引き起こす。心理社会的ストレスをトリガーとして、疼痛を正しく捉えられず、過度に疼痛を感じてしまう。


すごくシンプルに言えば、
腰自体に不具合があるのか、
それとも脳機能に不具合があるのか

この2つを危険因子として捉えます。

 

なかなか難しいですね…

 

腰痛と言っても痛みを生じる経路が違うと捉えていただければ問題ありません。

 

恐怖回避思考(fear-avoidance beliefs:FAB)

 

FAB とは、痛みに対する不安や恐怖感、自分の腰や腰痛、その他の筋骨格系疼痛に対するネガティブなイメージから、過度に大事をとる意識や思考・行動のことになります。

具体的に言えば、腰痛を恐れて予防としても治療としても重要な運動習慣を回避してしまうということですね。認知の歪みと言ったりもします。

 

でもこれは当たり前だと思います。

 

誰だって
「痛いかも」
とか
「嫌だなぁ」
と思ったら体が縮こまってしまいますから。

 

こう言ったFABの方に対しては、リハビリはとても効果的です。

 

理学療法士としてのアドバイスとしてはただ一つ
小さい成功体験を積み重ねる

これだけです。

 

すごく軽い負荷、当たり前に感じる楽な姿勢から運動始めて、痛くない体験を積み重ねる。これの繰り返しでFABは改善していきます。

 

言葉で言えば簡単なんですけどねぇ…

 

腰痛への対応

 

それでは腰痛に対してどう対応すべきか、またすぐに出来る対策は何か、どんな選択肢があるのか考えていきます。

 

すぐに対策できることとして、大きく分けて3つあると考えてください。

①装具(コルセットなど)
②環境設定(職場や自宅)
③運動療法


①装具(コルセットなど)

①の装具に関しては1番簡単で、コルセットを購入すれば済みます。人間工学的に身体を正しい位置に固定してくれたり、体幹の筋力のサポートをしてくれます。

 

病院でもよく
「コルセットして、痛みが出ないように生活してください」
なんて言われることがあります。

 

もし使うとすればネットですぐに買えるお医者さんのがっちりコルセット が良いかなと思います。

 

コルセットに関しては
安いと5000円から高くて10万円以上とピンキリです。


市販の安いやつだと少しサポート力が少ないかなと個人的には思います。
高いやつだと完璧に自分にフィットしますが、10万円は高すぎると思ってしまいます。


お医者さんのがっちりコルセット であればおそらく1万円前後ですので、コスパという点ではまぁ許容範囲かなと思います。

 

どうしても腰痛がある中で動かなければいけない人は、コルセットが1番簡単かと思います。


②環境設定(職場や自宅)

環境設定としては、
腰痛の出る姿勢を避けることや働き方を変えるという点があります。

 

先ほど話したように、前屈みの姿勢で腰痛を生じさせやすくなりますので、まずは前屈みの姿勢を作らない必要があります。

 

軽いものでも、床に置かずに椅子の上に置いたりすると良いかもしれませんね。

 

上記にあった腰痛リスクの高い運送業の方であれば、荷物を運ぶときに台車を使ったり、大人数に運んだりすればその人の腰痛リスクは下がります。

 

また看護や介護職の方で有れば、人間工学的にどう移乗動作を行えば腰に負担がかかりにくいか、職場の理学療法士に相談してみても良いかもしれません。

 

最近の話題としては着る、筋肉。マッスルスーツEvery(エブリィ) なんかもアリかもしれません。

 

僕も一度試したことがあるのですが、ほんとに腰の負担なく動けるので、とにかくすごいです。

 

試しでいいから一度着てみてほしいです。
ほんとに楽になります。

これなら前かがみになっても大丈夫です(笑)

 

流石に高額過ぎるので、会社が買ってくれるのであれば、選択肢の一つになるかもしれませんね。


③運動療法

運動に関しては1番取り組みにくいかもしれませんね。

 

よく聞かれるのが、

なにをすれば良いか分からない。

ということです。

 

そもそも腰が痛いのに、運動しろって分からない

こんな声も聞かれます。

 

腰痛で考えるポイントはこれだけ。
腰をそったときに痛いのか。
腰を曲げたときに痛いのか。

これを考えてみてください。

 

腰をそったときに痛いので有れば(反り腰とも言います)、腰を曲げるように運動してください。ずっとあぐらをかいているだけでもいいです。とにかく腰が曲がるように生活してみて下さい。

 

腰を曲げたときに痛いので有れば、腰をそらせるように運動してください。仕事の合間に伸びをしたり、うつ伏せになってみてください。特にデスクワーカーでずっと座っている人に多くなります。背中が常に丸まってしまうため、背中を伸ばすように意識して生活してみてください。


もし

自分1人では無理だ


という方がいらっしゃったら、今話題のオンラインヨガなどを利用してみても良いかもしれません。

この記事の下の方にちょこっと書いてあるので、覗いてみてください。

 

www.rehatree.net

 

 

まとめ

 

・腰痛の生涯有病率は8割を超えている
・看護師や運送業は腰痛リスクが30%以上
・腰痛の注意点は
 ①重いものを前傾姿勢で持たない
 ②仕事にやりがいを見出し、あまり抱え込まない
・腰痛の原因は、腰自体か脳機能の不具合
・運動恐怖感が強い場合は小さい成功体験を積み重ねる
・腰痛対策としては①装具②環境設定③運動療法がある

 


長くなってしまいましたが以上になります。

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参考文献
1)Fujii T, Matsudaira K: Prevalence of low back pain and factors associated with chronic disabling back pain in Ja-
pan. Eur Spine J 22: 432―438, 2013.

2)Fujii T, Matsudaira K, Oka H: The association between
compensation and chronic disabling back pain. J Orthop
Sci 17: 694―698, 2012.
3)Yamada K, Matsudaira K, Takeshita K, et al: Prevalence
of low back pain as the primary pain site and factors asso- ciated with low health-related quality of life in a large Japa- nese population: a pain-associated cross-sectional epidemi- ological survey. Mod Rheumatol 24: 343―348, 2014.

4) Matsudaira K, Konishi H, Miyoshi K, et al: Potential Risk Factors for New-onset of Back Pain Disability in Japanese Workers: Findings from the Japan Epidemiological Re- search of Occupation-Related Back Pain (JOB) Study. Spine 37: 1324―1333, 2012.